クリエイター・プロファイル・wowaka:ロックのスピード感で、VOCALOIDを「中生代御三家」へ押し上げた
VOCALOIDクリエイター・プロファイルwowaka「生きて、また会おう」
2019年4月、一通の訃報にVOCALOID界隈は言葉を失った。31歳のwowakaが急性心不全で亡くなったのだ。彼の名前は、「現実逃避P」という初期の名義とともに、この文化の骨格に刻まれている。
基本プロフィール
| 項目 | 情報 |
|---|---|
| 生没 | 1987年11月4日–2019年4月5日(鹿児島出身、享年31)[^1] |
| 学歴 | 鹿児島県立鶴丸高校 → 東京大学 |
| デビュー | 2009年、『グレーゾーンにて』を投稿。「現実逃避P」の名はここから[^2] |
| 主な音源 | 初音ミク、巡音ルカ、Megpoid |
| 転身 | ロックバンドヒトリエを結成、ボーカル兼ギター |
「現実逃避P」という名前の由来はじつにいい加減だ。デビュー曲の説明文に「現実逃避っていいな」と書いただけで、ファンがそう呼び始めた。けれど本人は決して逃避などしていない。東京大学在学中も作り続け、卒業後は「逃避」をそのままプロのロックミュージシャンへとアップグレードしてしまった。
三曲、一つの時代
『ローリンガール』(2011)
ほとんど誰もが一度は歌った「入り口の一曲」。疾走するドラムに浮遊感のあるハーモニー、サビは走りながら振り返るような感覚。
『アンハッピーリフレイン』(2012)
「不幸せ」をダンスミュージックの速度で歌い上げる。wowaka式の矛盾美学の見本だ。沈むほどに燃える。
『裏表ラバーズ』(2011)
恋心の表と裏を同時に再生する。メロディのフックの密度は、今聴いても古びない。
2011年前後、彼はryo(supercell)、hachi(米津玄師)とともにVOCALOIDの「中生代御三家」と並び称された。三人はそれぞれ、エレクトロニカ、ポップス、ラップの書き方を仮想の歌声の喉に詰め込んだ。
六年の沈黙、そして『アンノウン・マザーグース』
バンド活動に移ってから、wowakaは六年間VOCALOID曲を投稿しなかった。2017年、初音ミク十周年の折にV4X音源を買い直し、一週間で調教の勘を取り戻して投稿したのが『アンノウン・マザーグース』(Unknown Mother-goose)。投稿から5時間27分で殿堂入りを果たしている。[^3]
この曲はよく、wowakaがVOCALOIDに宛てた別れの手紙として読まれる。メロディは彼の最も象徴的な疾走ビートに戻り、歌詞はまっすぐな感謝の言葉。MVの「生きて、また会おう」という一節は、後にファンが追悼するときに最も多く引用される言葉になった。
遺したもの:速度、誠実さ、そしてあの「また会おう」
wowakaが残したのは技法ではなく、態度だった。いちばん速いスピードで、いちばん逃げられない本音を歌う。毎年4月になると、初音ミクと歌い手たちが決まって『ローリンガール』を引っ張り出してまた歌う。これは懐かしむための儀式ではない。彼が歌の中で約束した「また会おう」なのだ。
ひとことでwowakaを言い表すなら——||彼は逃避を疾走と書き換えた||。